ビジュアルイメージを制作する場合、文字を使う方法は二種類に分けられます。
まず一つ目は、
文字として使う=読ませる
二つ目は、
文字を素材として使う=読むことを期待しない
ここでは、この二つの方法に分けて考えてみます。
最初に文字を「文字として使う」について…
まずは新聞ですね。
新聞は、必要な事を伝えるために、内容の主従を文字の大きさで表現する…という手法は新聞が確立したと思われます。
そして、限られた紙面でどう読ませるか?センセーショナル性やメッセージ性をどう伝えるか?
そのための基本的なレイアウト手法も新聞が作り出してきたと考えられます。
オバマ氏のキャッチフレーズは、見出しとしても使い易かったのでしょう。なんだかポスターのようです。
でもまあ新聞の基本は、読む=文章から意味を得る。ですから美しいデザインからは、まだちょっと距離があります。
文字=読ませるの基本としてご紹介しました。
ジャックダニエルのラベルとバドワイザーのラベルです。
洋の東西を問わず、酒というものは古ければ古いほど上等で有り難いモノという考え方があって、それを端的に表すのがラベルでした。
面白いのは、いろんな有り難い事が書かれているのでしょうが、ラベルの中に書かれている文字をすべて読む人はあまりいません(笑)
意味を表現している文字と文章で構成されているのに…です。
と、同時にこれらのラベルは美しくレイアウトされています。そのため、文字を読まなくとも「あ、バドだ!」とか「テネシーウィスキーだ」など認識と判別がしやすくなってます。
権威とか歴史とかを語る場合、文字を主体にするデザインが採用される場合が多々あります。
これは人間が「文字主体のデザイン」を見ると「有り難さ」を感じてしまう反応を利用しているからだと思われます。
「権威」モノに多いデザインだからか?このデザインを施した「権威」モノが多いからか?卵が先か?にわとりが先か?的な話ですが、「文字主体のデザイン」にはこんな効用があります。
そして、この辺りから「文字=読ませる?」という感じになってきますね。
ハリウッドの大作映画
これは基本ですね。大昔からあります。タイトルの立体化というのは、アメリカ人好みなのでしょうか?
Adobeのイラストレーターには昔からプラグインだったり、効果メニューだったり、必ずこのエフェクトが装備されているのです。
日本ではそれほど好まれているフシはないのですが…
あ、でもこのポスターのタイトルをこのまま「秋物大特価市」に差し替えても違和感ありませんね(笑)
これなんかはまだ「文字=読ませる」が生きてます。だってタイトルですからね。読ませないと。。
でも、タイトルをどうにかして目立たせたい!という気持ちが、文字を装飾する方に注力されて行った例です。
ヴォーグの表紙とギリギリ読ませる文字
かつて日本では…
タイトルに写真が掛かるなどもってのほか!うちの看板に泥を塗る気か!と言われました。
それは、タイトルは「看板」読ませなければ!という強迫観念みたいなものがあったのだと思われます。
でも、今や誰もそんな頭の硬いこと言わないでしょう。
特に女性ファッション誌などは、タイトル文字がモデルの写真で欠ける事などフツーのこと。
最初のひと文字と最後のひと文字しか見えない状態なんかもあったりします。
個人的な経験では、ある市の広報でタイトルに切り抜き写真が被るデザインをしたことがありました。その時、課長決済まで行ったことがあります(平成時代w)。
結局OKになったんですけどね…タイトルに何かが被るというデザインは、地方都市の広報までなんとか了解が取れてる感じです。
で、ヴォーグの表紙です。上の方は丸かぶりです。
もうVOGUEって分かってるんだから、いいじゃんてな感じでしょうか。
タイトルが読めるか、読めないかとかは関係ないのです。キレイでしょ?カッコいいでしょ?優先さるべきところが違うのです。
そして、下の表紙ですが、これはタイトルが読めます。ですが、その洗練された表紙は今でも十分通用しますよね。
で、何が言いたかというとコレ50年以上前のデザインなんです。上に至っては、70年以上前…
こりゃ勝てんわ(笑)
さる日中友好会の記念誌表紙
すいません。私の仕事です。
読ませるか、読ませないかギリギリのところを狙ってます。作り手としては、まあ読めなくてもいいんじゃない?的なノリで作ってます。
一応すべての文字、文章はこの本に関係していることばかり(のはず。。。)なので、読んでも意味はあるようにしています。
ただ、作り手がそうゆう風に気を配っているというだけで、本当に読む人はあまりいないでしょうし、中国側からクレームが来たという話もありません。
みんな図柄だと判断しているのでしょう。
文字に意味は持たせるもう一つの意味は、突っ込まれた時対応です。世の中には結構高確率で「なんて書いてあるの?」というツッコミを入れる人がいるのです。そのあたりの気配りもデザインには必要ですね。
さて読める、読めないギリギリまで来た所で、次回は「文字を素材として使う」手法を考えてみます。