ビジュアルイメージを制作する場合、文字を使う方法は二種類に分けられます。
一つは、文字として使う
もう一つは、文字を素材として使う
今回は二つ目の、「文字を素材として使う」を考えてみたいと思います。
はい。文字を素材として使う…の最初はサインです。サインは、きっちりとした活字、組文字に対し肉筆で自由闊達な文字を加えるという定型があります。
大概堅い文章や組文字に、アクセントを加えるような書き方をします。別に実直に書いたって構わないはずなんですが、なぜか皆崩して…まるで、読めなくしようとするがごとく大幅に崩します。
しかも、読みにくいほど有り難さや威厳を感じたりなんかします。
そう、ポイントはここなんです。
実際の所、サインは「威厳」や「存在感」を高めるという効果があります。そして、「サイン」は文字なんだけど、文字としての役目を負っていません。
特に文字と言うよりむしろ絵やマークの役目に近いものがあります。日本にも、武将などが使う花押というものがありますね。
これをデザインに転用する場合「威厳」「存在感」がキーワードになるでしょう。
で、上はアメリカの独立宣言の署名だそうです。中身の重さにに比べ、ラフに書いてる感じが逆に圧力を感じたりします。
下はオバマ前大統領のサインです。ペンの置き方が、氏の左利きというクセを表している心憎い演出です。
上は、ご存じレオナルド・ダ・ビンチです。下は開高 健の著書で、作者自筆のタイトル文字です。
ダビンチは挿絵付でなんだかアカデミックな雰囲気ですが、なんだか偏った文字のレイアウトや、右上がりの並び、白場の空きまでが味に見えます。
もちろん全体のデザインを意識して書かれたものではないとは思うのですが…
特に文化的な事で名を成した人は書き文字に癖がありそれが「味」になる人が多いのです。
もっともダビンチは文化だけでなく、芸術や文明や科学まで影響する人ですが。
開高 健の本は確か存命中の出版だと思います。
なので、多分装丁のアートディレクターが直々に「一筆お願いいたします」とお願いに上がったのではないかと愚察します。
もしそうでなければ、生原稿より取り込んだのかも?
ただ本の表紙を紹介するときに悩ましいのは、帯をどうするか?です。
デザイナーの意図を想像すると、表紙単体で見てくれ!なのか、帯もデザインのうちなんだんよ!なのか。。
今回は、多分帯も含めてデザインされていると判断したのでそのまま掲載しました。
ちなみにトレペ系の紙に印刷されていて、下の文字が透けてます。
そしてこれらの手書き文をデザインに取り入れた手法はかなり古くからあるものです。
文字を読ませるということよりも、オブジェクトとして使っているという感覚ですね。
そして、この手法を上手く使ったのが、「ヒューマンヘルスケア・hhc」というキャッチコピーで有名なエーザイという製薬会社です。
こちら>>
ナイチンゲールの書き文字を使って自社のコンセプトを分かりやすく表現しています。歴史的有名人の使い方としては、ヒネリが効いています。
以前から上手い手法だなぁと感じ入っております。
左はナイチンゲールの直筆だそうです。もっともここから「hhc」の文字を取ったかどうかは定かではありません。
同じ手法では、著名な音楽家の手書き文字…の数字だけ集めて、それをタマ(カレンダーの日付)としてカレンダーを制作していた住宅メーカーも過去にはありました。
さて書き文字ばかりが素材ではありません。実際のフォントをさわって、イメージを作る方法もあります。
さて書き文字ばかりが素材ではありません。実際のフォントをさわって、イメージを作る方法もあります。
上段はまたまたヴォーグです。
発想はベタベタなんですが、妙な威圧感があります。
「これでいいのだ。なんか文句あるか?アァッ!?」
すいません。何もありません。
但し、またこれも恐ろしく昔の制作だとだけお伝えしておきます。
中段はすいません。これは私です。あまりデキがアレなので、迷ったのですが恥を忍んで晒します。
ま、「回収」だから回ってきたという…ただそれだけで…これ随分以前(10年以上前)に作ったのですが、某所で似たデザインを見かけました。
まぁ誰でも思いつくパターンですか…
はい。下段は…これも私です。
花屋さんのマークの課題でして‥
特に反応も聞けず、お蔵入りとなった習作です。
それはともかく、このパターンは漢字とアルファベットの融合ってできないか?という事を考えて作ったブツです。
この手法、地味にみなさん挑戦しているみたいですが、もう一つメジャーになりきれてないように思います。(感心できるものがない?)
外国人が考えたデタラメな漢字とかたまに見ますけど、アレはちょっと違うような気がします。
この花屋さんは個人的には気に入っているんですが、人によっては好き嫌いがあるかもしれません。
で、これは単に三つ揃えたというだけではありません。一応文字をさわるにしても、段階があって…
1.変形させる。
でも文字としての体裁は残す=ヴォーグ
2.改造を施す。
文字の意味を強調させる=回収
3.まったく違うモノに変化させる。
文字のフォルムのみ活かす=花屋のマーク
とまあこんな具合に分別できると思います。
文字ベースのデザインを発想する際に参考にしてみてください。